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困ったことがさらにもう一つ。
大慌てで鳥を追いかけたせいで、ここがどこか分からない。
…元いた場所に戻れるかな。
一応雨風のしのげる場所を、見つけてたのに。
「…あの、大丈夫ですか……?」
後ろから可愛らしい声がして、私は振り返った。
「…っ」
ぼんやり木の上を眺めていたから、全然気づかなかった。
長い髪に、綺麗な紫の瞳。
着ている黒の服は、少しだけ今日のお人形さんの服に雰囲気が似ている気がする。
困ったように、こちらを見つめるその人。
この人も、人と喋るのはあまり得意じゃないんだろうか?
「……木に、人形が、引っかかっちゃって」
思わずそう答えてしまった。
彼女はその答えに、木の上を見る。
「…あ、あれ、ですね?」
引っかかってる人形を見つけて指をさす。
私が頷くと、にっこり笑ってこういった。
「私に任せて」
そう言うと、また人形の方を向いた。
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