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私と和杷さんは、並んで歩いていた。
思えば今まで、私には頼れるものなんて何もなかった。
フラグメントが出たら倒す。
自分の欲のために記憶の欠片探し。
住む場所なんてないから、森の中で寝てた。
お人形さんは寝ないから、私が寝ているときは番をしてくれていたんだ。
食べ物は道端の草とかを食べてた。
木の実を見つけた日はちょっとしたごちそう気分だった。
これは本当なら食べるものじゃない、ってことくらいは分かっていたけど、
どうせ生前の記憶はなくて、美味しいものの味も思い出せないんだから
美味しいものを食べる必要はないかなと思っていた。
……それでも、生きていけると思ってた。
なのに、春希さんも和杷さんも、なんで私にこんなことしてくれるんだろう?
こんな厄介なだけの存在なのに、なんで一緒に暮らそうなんて言ってくれるんだろう?
……でも、確かに怖かったんだ。
一人ぼっちで夜の森にうずくまるのは。
「ローナさん」
ふと、和杷さんに声をかけられる。
和杷さんの方へ顔を向けると、暖かく微笑みかけてくれた。
「今日からここが、ローナさんの家ですよ。」
…そうか、でも、もうそれは終わりなんだろう。
「…ご迷惑をかけてごめんなさい、ローナ、迷惑かけないようにします」
私は和杷さんに深く頭を下げた。
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