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文芸部に入ってから月日はながれ、ついには、僕に作品を渡してくれる部員も眼鏡の彼だけになってしまった。
これまでの経過からしても、部長には創作意欲があまりないようで、文集の製作に励む事が役割となっているようだった。
部員達の活動を見ていると、僕も何かするべきなのか考えたりもする。
しかし、部員達に声をかけても良い返事は返ってこないのだ。よくもこの短期間でここまで嫌われたものである。自分の事でありながら、感心せざるを得ない。
同時に、嫌われるのも仕方のない事だろうとも思える。部長からスカウトされた形で入って来たかと思えば、毎日のように作品にダメ出しばかりし、何食わぬ顔でひたすらに本を読んでいるだけなのだから。
ふむ。そろそろ引き時といったところか。元々いた部員達の部活をつまらなくする為に入った訳でもないし、そもそも無理矢理入れられたのだ。嫌われてまで居座る理由などない。
一先ず、今日は帰ろう。
「…できましたよ。自信作です」
席を立とうとした矢先、その言葉に動きを牽制される。
ああ、そうか、まだ彼がいたのだった。視界に捉えた眼鏡君は、やはりそこで眼鏡を押し上げている。
無言で作品を受け取り、読む。そして、ゆっくりと彼に返す。
「部長に見せたら喜ぶよ」
それだけ言って席を立ち、静かに部室から立ち去る。彼の努力は素晴らしいし、尊敬に値する。それこそ、この部に相応しい人物だと思える。
この時間、部室棟の廊下を帰ろうとして歩く者は少なく、皆が逆の方向へと歩いていく。
こういう時こそ、本でも読んで無心になりたい。けれど、僕は二ノ宮金次郎ではないので、歩きながら読書などできない。だから、早く足を進めた。
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