第3章

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 僕の優柔不断はここでも発揮されている。  確かな思いを持った上で退部宣言をした者ならば、その場から立ち去るはずが、僕の体はその場から動こうとはせず、目の前に佇む副部長の視線から逃げるどころか、視線を交えて逸らす事さえしない。  そんな体とは裏腹に、心は揺れ動き穏やかではない。簡単な話、自信に満ちた彼の言葉に期待している。情けない話だ。 「君にはまだやり残した事があります」  僕が文芸部としてやり残した仕事があるというのか?  文芸部が文集を作成するにあたって、文集に載せる作品の選別、その作品に直しを入れたのは、他でもないこの僕だ。  という事は、僕にできる事はしたはずであり、やり残した仕事はないに等しいと思う。  それなのに彼は、まだ残していると言う。いつの間にか心は動揺し、抱いていた淡い期待など忘れているようだった。 「私の、いえ。部員達の活動を思い出して下さい。君以外の皆が筆を握っていますよ」  盲点だった。文芸部員が筆を持つ事は当たり前でありながら、僕は本は持っても筆を持たなかったのだ。  不思議な話、僕の中では幼い頃から、本は読む物であり、自ら書く物ではなかったのだ。誰かの作った物語、作られた物語を読み、感動する以前に、無意識に文章だと思って読んでいた。白々しい物だと、ずっと捉えていたのだ。  それでいて、文章に心動かされたいなどと宣っていたのだから、僕でさえ腹立たしい。  目の前の彼は僕以上に、僕に対して怒りを覚えているだろう。  無意識でありながらも、彼の努力の結晶に対して、虚構だ茶番だと、馬鹿にしていたようなものなのだから。
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