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部室に入るなり、第一声を放つのは他の誰でもない僕だった。
「部員の皆さん、新入部員の僕から厚かましいお願いがあります」
あからさまに無視をする者もいれば、不機嫌な顔を隠そうとしない者、話を遮ろうとする者もいる中、少数ではあるが僕の話に耳を傾けてくれているであろう者もいる。
こちらを見ているだけに過ぎない為、聞いてくれているのかは定かではないが、少しの勇気を振り絞るには充分な後押しになってくれた。
「これからは僕にも書かせて下さい。そしてできれば、僕の書いた物を皆さんに読んで頂いて、批評して欲しいです」
すらすらと、つらつらと口から流れ出る言葉達。
その反面、まだ書く内容さえも定まっていないというのに、堂々たる宣戦布告である。
己から負け戦を仕掛けてしまっているのは理解しているつもりだが、情動的な僕という人間は、感情一つで敵地に飛び込む程に愚かなのだ。
このように無遠慮な僕に、罵詈雑言が飛んで来ても仕方のない事だろう。
「君は何を言っているんですか。文芸部とはそういう部活ですよ?」
ため息混じりの副部長は、ニヒルに笑っている。
言葉の内容以上に、笑っている副部長の姿に驚いてしまっている自分がいた。
「……というよりも、今までが変だったのよ。部員の誰かが書いた物に対して、批評する人が少な過ぎたわ。批評しても殆どが褒め殺しだったもの」
そう言うなり僕を見て、大袈裟に閃いた素振りを見せる部長。
なにやら、女王の命による災厄が降り注いでくる予感しかしない。
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