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部長は僕を指差す。そのまま、物語の主人公のような決め台詞でも言いそうな雰囲気さえ携えている。
「不動君の書いた物をみんなで批評しましょう。今まで散々言ってくれた不動君になら、みんなも言い易いでしょ?」
部長の提案により、僕に集まる視線は痛々しいものだ。
言い易いどころか、寧ろみんなは言いたいくらいだという事がひしひしと伝わってくる。
「賛成です。沢山言わせて下さい」
副部長の言葉を皮切りに、部員達が続々と賛成表明を始める。
矢面に立たされて気づく、僕は完全に悪役だと。そして、部長に嵌められたということに。
「その代わり!今まで言われた事を根に持つのは無しにしなさい!でないと部活動の妨げになるわ」
見上げた部長精神である。
悪役に仕立て上げられたかと思えば、部員としての僕の事も考えた上で、それでチャラにしなさいと仰られた。
流石、女王様。部員が付き従うだけの事はある。
僕もその一員になりつつあるのかもしれない。
「最後に一言付け加えるわ!……不動君に手加減は無用よ」
不敵に笑う女王の姿に、もやはどちらが悪役だかわからなくなる。
そして、彼女の下には付きたくないと決心するには、十二分に事足りた。
断定的ではあるが、よく心の動く僕でさえ、この決心は揺るがない。
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