第2章

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 部室、と呼ぶには何もない空間である。  長机に椅子が並べられているだけの部屋に、正直、拍子抜けだ。 「何もないですね」  部長は何故か辺りを見回して、首を傾げる。無駄に可愛く見えるのは何故だろうか。 「文芸部室に机と椅子があって、他に何が必要なのよ。本は図書館で借りるから本棚もいらないし、テレビやパソコンも集中力の妨げになるじゃない!」  何故だろう。僕は凄く驚いてしまっている。驚きやすい性格ではあるけれど、部長がまともな事を言っている事に驚く程、僕の性格は狂っていただろうか。 「でも、今日は欠席者が多いのよ。だから、貴方に読ませられる本もないわ」  それならば、この人はどうして僕を部室に連れて来たのだろう。僕は本屋で、本を選んでいたというのに。  はたと考える。文芸部長にはそんな権限があるだろうか。もしあったとしても、校外に出た時点で無効である。 「それなら、帰って良いですか?」 「ダメよ!」  まさかの即答である。ここまで凄い圧政だとは思わなかった。恐るべし文芸部。  帰ってはいけないのなら、課題をするほかないな。鞄を開き課題を出す。 「…偉いわね」  こちらを睨んでいるかと思えば、何やら僕を褒めてくれました。今まで課題を欠かしたことはないのだけれど、ここで褒められると俄然やる気が出るってもんだ。  しかし、文芸部員になって既に2つも良い事が起きている。僕はどうして断っていたのか、甚だ疑問である。
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