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結局、文芸部に所属しても日常が変わることは無かった。放課後に本を読む場所が与えられただけで、それ以外に特に変わりはなく、文章には心が揺さぶられていない。
閉じた本の裏表紙に何も思う事はない。小さくため息をつく。
「今回もですか?」
部員の眼鏡男子に問われる。彼は専ら創作する側らしく、こうやって本を閉じる度に、自作の文を見せてくれる。
が、これまでの彼の協力も無駄に終わっている。
「これをどうぞ」
原稿を差し出しながら、眼鏡を押し上げる姿は凄く様になっていて頼もしい。
この仕草をする時は決まって、自信作を渡してくれている。
「自信作ですよ」
本人が言うのだから間違いないだろう。
しかしだ、読んでも何も感じない。これは僕が名作を読み漁った事で得た耐性なのかもしれないと、最近は思い始めている。
僕の心はこの年で枯れてしまったのだろうか。
「……文集に乗せられると思うよ」
彼に原稿を返しながら思う。僕は作品の評価をさせる為に入部させられたのではないだろうか。
だとすれば、また僕は人に嵌められたという事になる。
「またダメだったのね。まぁ仕方ないわね。次よ、次!」
部長が鼓舞し、部員達の士気が上がる。
毎日このやり取りが行われて、毎日見ているけれど、僕の為に頑張ってくれている可能性があると考えると、感無量だ。
それだけで、僕も本と向き合える。
こういう時でも僕の心は動くのだ。まだ枯れちゃいない。
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