第1章

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  ピンポーン、ピンポーン、 インターホンを鳴らした。 「はい」 「明光寺です」 「はい、すぐ開けます」 玄関の鍵を開けてもらうのを待っていた。 晃が小さい声で、 「五代目、五代目」 「何だよ」 一徳が言った時に、玄関のドアが開いた。 中から、六十代半ばの女性が出てきた。 「あっ」 目を丸くして、動きが止まった。 「五代目、メガネ、メガネ」 晃が小さい声で注意した。 気が付いた一徳は、後ろを振り返りながら晃の頭を小突き、サングラスを外した。 小さい声で、 「何で、早く教えないんだ」 正面に向き直り、苦笑いをしながら、 「今日は、天気がよろしいので・・・」 出迎えた夫人に頭を下げた。 二人、中へ案内され仏壇の前へ。   ポク、ポク、ポク・・・ 一徳が、お経を唱えた。 小さい頃から、住職のお経を聞いているせいか、何も見ないで唱えられる。 この事だけは、晃も関心していた。 一通り終わり、お茶を頂いていると。 「今日のお礼です」 お車代と書いてある封筒を渡され、 一徳は、中身を見ないで丁寧に懐に収めた。 車に乗り、 「さてと、昼にするか」 車の時計は、十二時を少し回ったところだった。 「昼って、お寺で食べないのですか」 「何バカな事言ってんだ。精進料理ばっかしだったら、体壊すだろう」 「何を食べるのですか。というか、この格好で何処へ行くのですか」 「ステーキに決まってるだろう。たまには栄養つけないとな」 「はあ」 車は、公園の駐車場へ。 「チョット待ってろ」 一徳は、後部座席の紙袋を持って、トイレに行った。 「五代目は無茶苦茶だな」 晃は、ブツブツ独り言を言っていた。 トイレから出てくる人を見て、 「五代目・・・」 ジーパンにジャンバー姿の一徳が、 「遅くなったな。晃も着替えれよ」 「着替え持って来てません」 「後ろに、ジャージとジャンバーあったはず」 後ろへ回って、着替えの服を晃に渡した。 渋々、着替えに行った。
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