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着替えた二人は、繁華街の地下にある、小さなステーキハウスに入った。
カラーン、カラン、カラン
ドアに着いているベルが心地良い音を発する。
「おう!」
「五十嵐さん、ご無沙汰です。どうぞ奥へ」
「元気にやってるか」
「五十嵐さんのお陰です」
店のマスターは、一徳が刑事時代に世話をした一人であった。
「じゃあ、いつもの二つ」
「はい、かしこまりました」
料理を待っている間に、恐る恐る晃は一徳に聞いた。
「いつものヤツって何ですか?」
「サーロインだよ」
「肉ですか???」
「晃な、食べ物一つ解らないと、良い説法が出来ないだろう」
そう言っている途中で、
「五十嵐さん、お待たせ」
「おう、来た来た」
「五十嵐さん、お弟子さん増えたんですか」
「この前の弟子と同期、二人しかいないんだ。よろしくな」
「ライス大盛り、サービス致しましたから」
「悪いね、頂きます。ほら、晃も」
「有り難う御座います」
「さぁ、食うぞ~!」
「コーヒー、後で持って来ますので」
マスターは、調理場へ戻った。
「どうした晃、食いたくないのか。それとも、不味そうだから食いたくないのか」
「違います。お肉ですよ」
「晃な、殺生って言うけどな、植物だって生き物なんだ、植物は殺生しても良いのか。生き物に甲乙付けるのか」
一徳にそう言われれば、返す言葉もない。
「頂きます」
食べ終わる頃に、マスターがコーヒーを持って来た。
「どうですか、お味は」
「変わらず、旨いね」
「有り難う御座います。今日は、ゆっくりして下さい」
「ゆっくりしたいんだけど、次があるからな。今度、ゆっくりしに来るから」
コーヒーを飲んで店を出た。
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