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「五代目、先程の公園ですね」
パトカー数台と、覆面パトカーらしい車が集まっていた。
「ちょっくら行ってくるから。お前は、ここで待ってろ」
助手席から降りた一徳は、早歩きで車から遠ざかって野次馬の中に消えた。
公園の入り口には、ロープが張られ警官が立っていた。
見回すと懐かしい顔ぶれが。
手を上げて、
「課長ー!」
気が付いた課長は、隣の警官に何か話し、その警官が走って一徳の方に来た。
「五十嵐様ですね、田上課長が確認したい事があると。こちらへ」
「はいはい、そうこなくちゃね」
田上課長の所へ案内され、
「五十嵐、久し振りだな」
「田上も変わらずだな」
田上と一徳は、同期の同僚であった。
「ところで、五十嵐。今日この公園のトイレに来たか」
「昼過ぎに、着替えに来たけど。この騒ぎに関係があるのか」
「いや、不審人物の証言があってな。特徴がお前に似てたもんだから」
「俺は、善良な市民ですよ。ましては仏に仕える身ですよ、外見で判断しちゃいけませんね」
「俺の目から見ても、筋金入りに見えるけどな」
話をするうちに、刑事の顔になった一徳は、
「それより、何で俺を中に入れてくれたんだ」
「迷ったんだけどな、遺体の確認をしてくれないか」
「確認? 俺が?」
シートを被せられて、担架の上にある遺体の傍に二人移動した。
手を合わせ、シートを取り確認すると、
遺体を見るなり、直ぐに一徳が、
「平川、平川 一ですね。金山金融の」
「やはりそうか、今はアフターケアという会社になっているが、金山金融の平川か」
「そうですね、胸のバッチが金山金融の社章でしょう」
金山金融といえば、石崎が潜入捜査をしていた会社だった。
この遺体の平川が犯人であると確信し、一徳は証拠を集めていたところ捜査は打ち切りになった。
因果な感じが漂っていた。
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