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6月、私の隣のデスクの彼女はこう言った。
「お先です。小宮(こみや)先輩」
こうも言った。
「ブーケトス、絶対先輩に投げますからね」
こうも言い放った。
「あ、結婚式って出会いの場でもあるんですよ! ちゃんとオシャレして気合い入れてきてくださいね」
彼女の中では、4ヶ月後のお式まで私に彼氏ができないこと確定らしい。
「承知のすけ!」
おどけて敬礼しながら言うと、「やだ~、先輩。死語ですよそれ」と肩を軽く叩かれる。
26歳、私の少し歳の離れた妹と同じ歳の彼女は、10月に式を挙げ、11月いっぱいで有給を使い切った後、退職予定だ。
よろしい、よろしい。
人は会社のためじゃなくて、自分の幸せのために生きるべきだもの。
中途半端な時期の退職も、イケメンワンコ系彼氏の写メを頼んでもないのに見せたりして己の幸せを存分に振りまくことも、私の二の腕を「気持ちい~」と言ってタプタプすることも、許そう。許そうぞ。
その可愛さに免じて。
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