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「は・・・へ・・・じ、地蔵?」
何が何だかわからない男は、ぽかーんと目の前の石の地蔵を見つめた。
一体は、赤い前掛けをスカーフのように首までたくしあげてなびかせている。
一体は、子供にでも落書きされたのか、唇に蛍光ピンクのペンキが塗られている。
一体は、ぴかぴかに磨かれて真新しい絹の衣を身にまとっている。
一体は、風雨に晒されたあとが残り、足元が苔むして緑色になっている。
一体は、うす汚れて黒ずみ、頭が欠けている。
そんな地蔵たちが、自分を取り囲み、ポーズを取って人の言葉を話しているのだ。
男は腰が抜けそうになった。
その男の前に、唇ピンクの地蔵が進み出た。
「私がいる寺はね、どーしよーもない男に苦しめられている女性の駆け込み寺なのよ!だから、あんたみたいな男を見ていると、ムカつくわ!
私の秘技を食らいなさい!
秘技!SIN・GAN!」
桃の目が、くわっと・・・開かれはしなかったが光った。
「何ですか、あの秘技?」
新参者の黒が、緑に聞く。
「単なる心眼です。我ら全員が出来ます。ちなみに、目を光らせる必要はまったく皆無です。」
単に、かっこつけただけだったらしい。
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