第1章あらため ひとぉーっつ!

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「先日、残業帰りの娘さんを、変質者が襲ったんです。私の後ろに隠れて飛び出していって。  襲われたのは、2丁目の魚屋さんの孫娘のりりかちゃん21歳独身。襲ったのは、5丁目の自称自宅警備員47歳独身結婚経験なしDT拗らせたりりかちゃんのストーカー。」 「マジか!りりかちゃんちは、うちの寺の檀家さんじゃねえかよ!許せねえな、そのストーカー野郎!」 赤の家は、ここら辺で一番大きな寺である。 「でしょ?女の敵は私の敵よ!」 桃の家は、ここら辺で女性の駆け込み寺として有名な尼寺である。 ちなみに、尼寺で女性だけに囲まれ続けた結果、身はともかく心はすっかり女性になってしまった。 「魚屋っていうと、辰吉さんだ。うちの当主の囲碁仲間じゃないか。辰吉さんの孫娘というなら、うちの当主の孫も同然!」 金の家は、先ほども説明したとおりの大金持ち。 「深夜、夜道を心細い思いで急ぐ若い女性を襲うとは卑怯千万。私もあなたと同じホームレスですが、だからこそ!目の前でそのような蛮行が行われるのは許し難い。」 緑に家はない。 彼は道端を自らの家と称して、それを恥じていない。 「それで、黒。りりかさんはどうなりましたか?」 激昂した仲間の中で一番最初に冷静さを取り戻した緑が、黒に尋ねた。
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