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「……あの人は、お父さん…です」
写真の人、それはあたしの記憶にはいないお父さん。
お母さんが生涯お父さんしか好きにならないと決めたくらいに、かっこよくて優しそうな人。
「お母さんが、お父さんの話しをいっぱいしてくれて……でも、あたしには記憶なんてないから……せめて写真だけでもって」
ゆっくりと、ドキドキしながらも、お父さんの話をしてみた。
その間、2人とも口を挟むこともなく話を聞いていてくれた。
ふーーーー。
自分が話の中心になるって、思ったよりも疲れる。
「子豚ちゃん、ごめん」
開いた膝の上に両手を置いて、勢いよく頭を下げた高城さんと、その隣では梓さんも小さく頭を下げて「悪かった」と、何故か謝られてパチパチと瞬きする。
「そんな大切な写真をネタにして、賭けとか……最低なことして傷つけてごめん。そういや、おれ謝ってなかったし」
顔を上げた高城さんの眉間の皺をじっと見て、ああそのことかって。
まさかこんなド派でヤンキーさんが、こんな風に謝ってくれるなんて驚きだった。
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