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「勘違いすんな。あいつは───」
あいつは、なんだ?
口をポカーンと空けて黙り込む。
そして、首を傾げる。
小夜は、おれにとってなに?
友達、ってのもなんか違う。
後輩、だけど直接的には違う気がする。
妹、なわけない。
だったらなんだって考えて、しっくりくる言葉は出てこない。
「梓が自分から女の子に関わったのって、おれの知る限りあの子だけ。なんで?」
なんでって、それがわからねー。
最初はオロオロした態度が感に触った。
おれは思ったことは何でも口に出てしまって、それが原因で喧嘩沙汰も沢山あるほとで、だから言いたいことも言えず我慢してるようなアイツにイライラした。
だから最初はおれの態度は悪かったはずで、小夜もそんなおれに明らかに怯えていた。
でも会う回数が増えるようになって、小夜のあれは相手に気を使いってなのと、きっと自分に自信がないからなんだろうって思うようになると、それが妹と重なって。
どこかほっておけなくなった。
妹に「うじうじしてっから、からかわれんだ。一発ぶちかませば相手も黙る」なんて、女に言う台詞とは到底思えないことを言うおれ。
なのに、そんなおれの言葉を真に受けて一生懸命応えようとしたのが妹。
それでもからかわれるのは収まらないらしいけど、前よりは自分を主張できるようになったのか、友達ができたって嬉しいそうに話してくる笑顔に癒された。
そうだよ。
その時と同じだろ?
妹と小夜が被るから、アイツも妹のようにおれの言ったことに律儀に応えようとしていて、その姿が可愛い……
可愛い?
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