27/30
前へ
/235ページ
次へ
おれらのいる喫煙席から離れた禁煙席、硝子張りの遮り板の向こうによーく知った顔と知らねー顔。 ヒクヒクと頬が痙攣。 なにやってんだよ? 人に連絡もよこさねーで、男と飯食いに来たってか。 「子豚ちゃんやるねー。あのイケメン、どっかで見たことあるような?」 「………」 イケメン──すっげー真面目そうな大学生くらいの男にメニューを差し出され頬を染めて覗き込む、小夜。 おいこら、なに頬染めてんだつっーの。 せっかくこのおれがご褒美に飯に連れて行ってやろうと思っていたのに、別の男と飯食いに来てるアイツに無性に腹が立つ。 理由? それは、ただムカつく。そんだけ。 「あ!!思い出したっ、あのイケメンだって!」 ポンっと拳を手の平に打って、その手を口元に持って行き何故かコソコソ話してくる弘樹。 誰に聞かせたくねーんだよ。 「あのってなんだよ?あのって」 「だから、例の、賭けの、イケメン写真、だって!!」 いちいち言葉を区切って強調する。 賭けのイケメン写真? それって小夜の父親じゃねーのか? 「ちょっと違うけど。雰囲気似てるぞ。だから、あんなに打ち解けてんのかなー」 頬杖付いて、ジーッとその例のイケメンと小夜を見て呟いた。 よくよく見てみれば、少し緊張してる感は残しつつも、もう随分付き合いが長そうだと思わせる程に気楽そうに話しをしている。ように見える。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加