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景壱に抱き付いた女は裂けた口を開いて、けらけら笑う。
「ひ、久しぶりだねぇ」
「あら、あんた恭治! 渋くなったわねぇ。私と一緒になる気になったのねぇ」
「ち、違うよぉ。輪入道が、この店に来てないかい」
夜楽の背に隠れて恭治は言う。
「なーんだ。来てないわよ。でも、変な客が来てるわ。ほら、あれよ」
口裂け女が指差した方には、べろべろに酔っ払った狐の姿の裁火が居た。
「裁火さん、何やってるんですか?」
「景ちゃんら~、お久~。聞いてよお~、あらし悪くないのに稲荷大明神様ったらひろいのよお~」
「は、はあ。どうしたんですか?」
何時もと違う口調に戸惑いながら景壱は先を促す。
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