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美霊が悲鳴をあげました。白目をむいた佳子が、尖った爪で美霊のブレザーのそでを引っかいたのです。ビリッとそでが破れる音がしましたが、皮膚まで傷つくことはありませんでした。
「でも、大丈夫よ!」
美霊は聖水銃をかまえると、引き金を引いて、ミキオの霊が取り憑いている佳子の体に聖水をはなちました。
聖水銃からはなたれた聖水が真っ直ぐに飛び、佳子の体にかかると、佳子は「ウウウ…」と苦しそうなうめき声をあげ、その場に倒れてしまいました。そして、倒れている佳子の体からボゥッとミキオの霊が出てきました。
「かわいそうに…。長年、苦しんだから、成仏できないのだわ」
美霊がつぶやくと、お婆さんがはうように、ミキオの霊のそばへ近寄りました。
「ミ、ミキオ、この人たちに迷惑かけるんじゃないよ! このお方はね、あんたを成仏させてやろうとしてるんだから!」
「じょ、成仏…ボクは、成仏なんてできないよ! ボクは、足を探してるんだから! ボクの足はどこ…」
ミキオの霊の言葉に美霊はハッと目を見開きました。
「あ、そうか! 足ね! 足を探してたのね! それで、成仏できなかったのね!」
美霊は納得したようにポンと手を打ちました。
「お婆さん、ミキオさんの足です! 足を探さなければ!」
「え、足って、あたしには、わからないよ…」
お婆さんがとまどっていると、美霊は「おまかせください!」というと、両手の人指し指と親指を合わせ、三角形を作ると、三角形の中から辺りを見回しました。そして、イチョウの木の根元を見たときでした、指で作った三角形の中が赤く輝いたのです。
「あ、あのイチョウの木の根元です! あそこにミキオさんの足が!」
美霊が叫ぶと、お婆さんはスッと立ち上がり、イチョウの木の根元を手で堀りはじめました。お婆さんの必死の形相を見た美霊は、辺りをキョロキョロと見回すと、体育館の壁に立て掛けてあったスコップを見つけると、それを取ってお婆さんのそばへかけよりました。
「お婆さん、これを!」
美霊がいうと、お婆さんは奪うようにスコップを受け取り、イチョウの木の根元を堀りました。
お婆さんが夢中で土を掘り返していると、美霊は「お婆さん、それです!」と声をあげました。
ジッと土の中を見ると、土の中に茶色く変色した、子供の足の骨があったのです。
「ぼ、ボクの足だ!」
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