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ミキオの霊が、震える声でいいました。美霊とお婆さんは、土の中から全ての骨を取り出すと、それをミキオのお墓に埋葬してあげました。
美霊が般若心経を唱えると、ミキオの霊は安心したように、美霊に向かって手を合わせると、青い空に昇っていきました。お婆さんは、それを見届けると、美霊にお礼をいいました。
「いえ、いいんです…」
美霊は照れたように頭をかき、思い出したように倒れている佳子の方へかけよると、佳子の上半身を起こし、右手の人指し指と中指を立て、真言を唱えました。
「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ!」
すると、閉じていた佳子の瞼がゆっくりと開きました。
「あら、私、どうしたの…?」
佳子は目眩を起こしたように頭へ手をやって美霊やお婆さんを見回しました。
「佳子さん、大丈夫? あなた、ミキオさんの霊に体を奪われてたのよ」
美霊が佳子の背中をさすりながらいいました。
「あ、ミキオさん、どうしたの?」
佳子が辺りをキョロキョロと見回すと、お婆さんがいいました。
「美霊さんが、ミキオを成仏させてくれたんだよ」
お婆さんは目に涙を浮かべ、青く高い空を見上げました。佳子は「よかった…」とつぶやくと、美霊を見て微笑みました。
「美霊さん、ミキオを成仏させてくれてありがとうね」
お婆さんが頭を深く下げると、美霊はお婆さんを見て微笑みました。
「何か不思議なことが起きたら、いつでも私にいってくださいね! それでは、ごきげんよう、さようなら!」
美霊はそういって頭を下げると、二人の前から立ち去ったのでした。
校庭でサッカーの練習をする子供たちの声が響きわたっています。空はどこまでも青く高く、煌めいていて、残暑の頃の風が吹きわたっていました。
美霊が空を見上げると、ミキオの笑顔が見え、「ありがとう」と声が聞こえたのでした。美霊は大切なものを胸に抱きしめながら、校庭を出て行きましたが、その時、本当に大切なことに気がついて、思わず自分の頭をたたきました。
「アラ、私ってバカ! 料金をいただくの忘れててよ!」
美霊はおおあわてで、お婆さんと佳子のもとへ走って行ったのでした。
おわり
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