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騒々しく自動車が走る高架橋の下、人気のない暗がりに、1人の女の子が立っています。女の子はさっきから、薄汚れた壁に貼ってある、貼り紙をながめています。女の子が熱心にながめている貼り紙には、こんなことが書いてありました。
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しかし、貼り紙のどこを見ても住所どころか、地図さえ描いてありません。貼り紙に穴が空くかと思うほどジッと見つめていると、背後から肩をたたくものがありました。女の子がドキッとして振り向くと、そこには1人の男が立っていました。男は黒いスーツを着て、黒い口髭を生やし、長い髪を風になびかせた、いかにも怪しい男です。
「あの、何でしょう?」
女の子は蚊の鳴くような声をふりしぼり、ついと銀縁眼鏡をずりあげました。
「さっきから熱心に貼り紙をごらんになっているようですけど、ウチの壇先生に何かご用件でも?」
黒スーツ男がほほえんでそういうと、女の子はチラと貼り紙に目をやって「ハイ…」と返事をしました。
「ほう、それは、それは! 壇先生にご用件があるということは、何か不思議なことでもあったんでございますか?」
黒スーツ男がうれしそうにたずねると、女の子はまた「ハイ」と小さな声で返事をしました。黒スーツ男はポケットから携帯電話を取り出して、どこかへ電話をかけて、二言、三言、話しをすると、すぐに電話を切ってしまいました。
「それでは、壇先生の事務所へご案内いたしますよ! 私の後についてきてくださいね!」
黒スーツ男の言葉に女の子は「あ、あの…」とつぶやきながら、黒スーツ男の後をついて行きました。
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