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美霊がぐぐっと身を乗り出してたずねると、佳子は眼鏡をずりあげながら紅茶をすすると、大きくうなずきました。
「ハッキリいって、私、見たんです! 体育館裏に足のない男の子が現れて、ボクの足はどこ、ボクの足はどこ、っていいながら、私のまわりを回ったんです! 私、もう夢中で走って逃げました! あれって、絶対、幽霊だと思うんです! 」
佳子は深くため息をつくと、また紅茶をすすりました。
「足のない男の子の霊…それは、何とか成仏させてあげたいですね。わかりました。あなたと一緒に学校へ行きましょう。いえ、今日はもう遅いので、後日、日を改めて学校でお会いすることといたしましょう」
美霊は佳子とスマートフォンの電話番号を教えあい、隣の部屋にいた黒スーツ男を呼びつけると、佳子を元の町へ送って行かせました。
美霊は窓の外をうかがいながら紅茶をすすると、黒スーツ男と歩いて行く佳子を見送りました。
外はもう薄暗く、空には満月が浮かび、ナラクの町を見下ろしていました。
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