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何の意味があるのか、機銃掃射するやら爆弾を落とすやら、終戦間際、弟はまだ六歳だったけど、爆弾の犠牲になったんだ! 右足を吹っ飛ばされた弟は、二日間苦しんで死んだよ。全く、戦争なんかするもんじゃないね! 昔はこの辺りは野原だったから、弟の墓を掘って埋葬したんだよ。今日は弟の月命日だから、こうしてお墓参りに来たのよ」
お婆さんがそんなことを話したので、佳子はびっくりしてしまいました。
「それじゃあ、この間の足のない男の子は…!」
佳子は叫ぶようにいうと、尋常ではない表情を浮かべました。
「え、足のない男の子って、何のこと?」
お婆さんがそういって、佳子の顔を見つめたので、美霊は事の次第をお婆さんに話して聞かせました。
「そ、それは、本当なの? ミキオが、ミキオが…!」
「お婆さん、落ちついてください! どうやら弟のミキオさんは、成仏されてないようですね。私、霊能士なので、ミキオさんの魂を成仏させてさしあげます!」
優しげな目でお婆さんを見つめる美霊の顔を見たお婆さんは、
「よろしくお願いしますよ、美霊さん!」
といって、泣き出さんばかりに表情を崩すのでした。
三人は、体育館裏の、ミキオの墓のある方へ急ぎました。辺りには木々が茂り、薄暗く、不気味に静まりかえっているようです。サッカークラブの子供たちの声が、どこか遠くから聞こえてくるようでした。
「ほら、あれがミキオのお墓だよ」
お婆さんはそういって、苔むした塀の前にひっそりと立つお墓を指さしました。
(あんなところにお墓が…)
と、佳子は心の中でつぶやきました。体育館裏へは何度も来たことがあるけれど、こんな寂しげな場所にお墓があるとは、今まで気付きもしなかったのです。佳子は今まで気付かなかったことに申し訳なくなり、うっすらと目に涙を浮かべたのでした。
美霊と佳子とお婆さんは、お墓に花束や、お線香や、お菓子をお供えすると、手を合わせました。美霊はその間、一心に般若心経を唱え続けました。その時、辺りがいっそう暗くなったばりか、何やら肌寒さを感じてしまいました。
「きゃっ! 何だか寒いよ!」
佳子が悲鳴をあげました。
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