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お婆さんは、辺りをキョロキョロ見回しています。美霊が般若心経を唱えるのをやめ、ハッとしたように背後を振り向くと、目の前の空間がグニャリとゆがみ、右足のない坊主頭の着物を着た少年が、ボゥッと姿を現したのです。
「で、出た!」佳子が叫ぶと、お婆さんは「ひぃぃぃっ!」と悲鳴をあげ、腰を抜かしたように、その場に座りこんでしまいました。
「ボクの足はどこ…ボクの足はどこ…」
とても悲しい、冷たいような声で、ミキオの霊がいいました。お婆さんは、それを聞くと、口をパクパクさせて、何かを喋ろうとしています。
「あ、あの、私、ハッキリいって怖いんですけど!」
佳子は悲鳴をあげながら、サササッと美霊の背後に回り込み、ガタガタと体を震わせました。
「落ちついて、佳子さん!」
美霊は佳子の背中をさすって佳子を落ちつかせると、般若心経を唱えながら、背中に背負っているピンク色のリュックの中から、水鉄砲のようなものを取り出しました。水鉄砲のグリップには、五芒星が描かれています。
「ななな、何だい、それは!?」
地面に座りこんでいたお婆さんが、水鉄砲のようなものを見て驚くと、美霊は、「聖水銃です!」と答えました。
「そ、それで、ミキオをどうするんだい!?」
立て続けにお婆さんが美霊に聞きました。
「大丈夫ですよ、お婆さん! この聖水銃には、薬師如来さまにより清められた聖水が入っているのです! この聖水をミキオさんの霊にかければ、ミキオさんは成仏するはずです!」
「ウウウ、ボクの足…」
ミキオの霊がうめき声をあげたかと思うと、ヒュンと高く飛び上がり美霊の頭を飛び越え、美霊の背後にいた佳子の体に乗り移ってしまったのです。
「しまった!」と、美霊は声をあげました。ミキオの霊に体を乗っ取られた佳子の体がブルブルと震えると、白目をむきながら、美霊に襲いかかりました。
「ど、どうしたんだい!?」
何が起きているかわからないお婆さんは、美霊に聞きました。
「ミキオさんの霊が、佳子さんの体に乗り移ってしまったのです…きゃっ!」
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