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 それからの数日、授業以外の自由時間、タツオの姿はつねにシャワー室で目撃されるようになった。タツオがはいったブースからは、ときおり高圧洗浄機でもつかうような音が響き、扉のうえからは細かな水滴が飛び散ってきた。  ほかのクラスの生徒も興味深げに覗(のぞ)きこもうとしたが、そこはすでに予選で敗れて暇なクニが、タツオのブースに人が近づかないように衛兵のように立ちふさがっていた。3組の異種格闘技戦の優勝候補、逆島断雄(たつお)がシャワー室でおかしな水行をおこない、秘密の特訓をしているらしい。 噂はたちまち学内に広まった。しかもボクシングの名手、やはり優勝候補の菱川(ひしかわ)浄児(じょうじ)はなぜか朝日と夕日を浴びながら、グラウンドの一角に立ちつくし、ヨガのようなおかしなポーズでやはりおかしな呼吸法を繰り返している。東園寺崋山(かざん)の秘伝「呑龍」の脅威を恐れ、ふたりともオカルトに走ったのではないか。学内の噂(うわさ)の後半は、そんなふうに締めくくられるのだった。
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