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「あ、凛子さんいるんじゃん!高丘です」
「ちょっとお待ちください」
玄関とリビングを分けているドアを開け、壁掛けの全身鏡で身なりを確認する。出かけるつもりでいたから、化粧も服装も万全だ。先週のような、部屋着姿の二の舞は免れた。
「こんにちは、高丘さん」
「こんにちは。凛子さん、今日って予定ありますか?」
「特にありませんが……」
彼のテンションは高めなのが通常なのだろうか。だとしたら、きっと私はついていけない。
「鍋って持ってます?」
「鍋?持ってますけど」
調味料を貸し借りするような感じ?
――週末だから部屋で鍋でもするのね。遊びに来る女性が鍋をふるまうと言い出したのかもしれない。
だとしたら、特に予定がないと答えてしまったことが、妙に悔しいような悲しいような……痛いところを突かれたと今になって気付いた。
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