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「それじゃ、あとで食材持ってきますね。あ、ちなみにトマト鍋と豆乳鍋ならどっちがいいですか?」
――トマト鍋?!ごく普通に水炊きとかチゲ鍋とか、種類豊富な中で、どうしてそれを選んできたのだろう。私の嫌いなものを選択肢にいれてくるなんて、ことごとく彼とは合わない気がしてならない。
「俺は、トマト鍋がいいなぁって思ってるんですけど、凛子さんの好きな……」
「豆乳鍋がいいです」
彼の言葉を遮る。トマト鍋にされてたまるもんですか。
「了解です!ではまた後程」
パタンと閉じたドアに、チェーンを掛けて施錠する。
「あっ!高丘さんっ!」
急いでドアを開けて顔だけ出し、隣室の方を見たものの、もう彼の姿はなかった。
一緒に鍋をつつくなんて、まだいいと言っていないのに……。
豆乳鍋がいいと答えたことで、約束してしまった自分にため息が出た。
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