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話しかけて断ろうとする私の気配に気付くことなく、彼は部屋に入ってしまった。
慌てて煙草を灰皿に入れて、部屋を突っ切り玄関へ向かう。施錠したドアを開けて、ミュールを履きながら歩き、隣室のインターホンを押した。
――と、同時に開いたドア。彼の手にはスーパーの白いビニールがある。
「びっくりしたー!凛子さん、どうしたの?」
「あ、いえ、その……」
言うことは1つ。約束はしていないと伝えるだけ。
でも、あれから間が空いてしまったせいで、言いにくさを感じる。
それに、特に予定がないと言ってしまっているから、なぜなのかと言われたら、聞いてしまった話を理由にするしか浮かばない。
「ちょうどよかった。まだ持っていくのあるから、これ先に運ばせて?」
押し切られ、促されるまま部屋に戻ると、彼は玄関にビニールを置いて出て行った。
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