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断る機会を失ってしまった私は、彼が置いていった袋の中を見て、キッチンへと運んだ。肉類はとりあえず冷蔵庫へしまい、野菜はシンク横の調理台へ並べた。
「凛子さーん」
あまりにぼう然として施錠し忘れていたドアを、高丘さんは勝手に開けて入ってきた。
「はい」
「さっきの、もう入れた?」
「お肉は冷蔵庫にしまいましたけど」
「そう、それならいいんだけど。鍵してないから、驚いたよ。ちゃんとしないと危ないよ?」
勝手に入ってきたあなたにだけは言われたくないと、心の中で呟いた。
「入っていいですか?」
本当は、ここで追い返したいところだけど、もう食材が揃ってしまったのだから仕方ない。鍋を食べたら帰ってもらおう。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
この部屋に異性が入るのはいつぶりだろう。配送業者が玄関先に来ただけで、あとは特にない。元々、人を家に呼ぶのは苦手だからだ。
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