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◇◇◇
「ただいまー」
「ここ、私の家です」
「まぁまぁ、そういつまでも怒ってないで」
スーパーで不意打ちばかり食らって、さすがに機嫌を損ねた。私は彼にからかわれているのだろうか。私にはそういうことはしないと言った彼のあの発言は、一体なんだったのだろう。
「お詫びデートだから、俺が作ります」
「そうしてください」
もうキッチンに立つ気力もない。買ってあったビールを冷蔵庫から取り出し、煙草と携帯を持ってベランダに出た。
とっとと調理して、食べて飲んで帰っていただきたい。今日は頭が非常に疲れている。
いろいろあり過ぎたのだ。彼の素性を知ったこともそうだけど、私の気持ちを見透かすようなことを帰りに言ってきたり、銭湯で未亡人にナンパされてたり、キスを覚えられていたり……すべてが私の許容を越えてきた。
「ねぇ、凛子さーん」
手慣れた様子でハンバーグとスープを作り始めた彼が、私を呼び寄せた。
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