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「明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
襟元にファーがあしらわれたコートを羽織った山下さんが、マンションのエントランスまで迎えに出てくれた。雪が積もり、連日の寒さで凍った路面を歩く私に配慮してくれたのだろう。
「ヒールじゃない方がいいですね。すみません、考えてなかった」
「いいよ、俺につかまって歩いて。それにヒールの方が凛子さんらしくて好き」
「ありがとうございます」
汚れのないレクサスに乗せられ、人混みだと予想できる神宮へと向かう。涼やかな目元が時折眩しそうに細められる横顔に、大人の色気を感じた。
「年末はご実家に?琴子さんも一緒でした?」
「実家には帰りましたけど、姉夫婦と予定が合わなかったんです」
「それは残念ですね。僕も実家に顔を出して、あとはスノボしてきましたよ」
何をしていたのかと気にしている私の気持ちは、苦労なく解消された。
隠し事のないオープンな感じがするあたりも、好感を持てる彼の一面なのかもしれない。
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