rule 7

4/31
143人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
 「明けましておめでとうございます」  「おめでとうございます」  襟元にファーがあしらわれたコートを羽織った山下さんが、マンションのエントランスまで迎えに出てくれた。雪が積もり、連日の寒さで凍った路面を歩く私に配慮してくれたのだろう。  「ヒールじゃない方がいいですね。すみません、考えてなかった」  「いいよ、俺につかまって歩いて。それにヒールの方が凛子さんらしくて好き」  「ありがとうございます」  汚れのないレクサスに乗せられ、人混みだと予想できる神宮へと向かう。涼やかな目元が時折眩しそうに細められる横顔に、大人の色気を感じた。  「年末はご実家に?琴子さんも一緒でした?」  「実家には帰りましたけど、姉夫婦と予定が合わなかったんです」  「それは残念ですね。僕も実家に顔を出して、あとはスノボしてきましたよ」  何をしていたのかと気にしている私の気持ちは、苦労なく解消された。  隠し事のないオープンな感じがするあたりも、好感を持てる彼の一面なのかもしれない。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!