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◇◇◇
「先輩、一大事です」
始業時間より20分早く出社すると、エレベーターを下りてすぐに愛名ちゃんにつかまった。
「おはよう、どうしたの?」
愛名ちゃんの表情が、いつになく真剣だ。こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、あまり感情を顔に出さない彼女にしてはとても珍しいことだ。
「昨日、飲み会に行くって言ったじゃないですか」
「うん、言ってたね。楽しかった?」
「それがですね……」
おもむろに握っていた携帯を私の目の前にかざし、彼女は途端に嬉しそうに微笑んだ。
「例の人、高丘さんって言うんですけど。連絡先を交換できました!」
世間はこんなにも狭いものなのだろうか。愛名ちゃんが以前から話していた相手は、高丘さんだった。
愛名ちゃんの携帯には、2人が仲良くピースサインをしている姿が収められていた。
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