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それから、姉とどんな会話をしたか、まともに覚えていない。
純弥さんが5月の連休中に入籍を済ませていたことまで聞かされたあたりから、耳鳴りのような音がしていた。
「先輩、顔色悪いですよ。お昼何食べてきたんですか?」
「そう?お蕎麦を食べてきただけなんだけどな」
「体調悪いなら、無理しないでくださいね」
「うん、ありがとう」
まさか、失恋理由で早退なんかできるはずもなく、黙々と仕事に打ち込む。気が付けば退社時間を迎えていて、定時を20分回った頃にデスクを立った。
「愛名ちゃん、まだ近くにいる?」
先に帰った彼女に電話を掛けた。今夜は1人でいられそうにない。
泣いても怒っても、いつの間にか恋を終わっていた事実を受け入れなければならないのだ。
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