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――ダンッ!!
豪快に中ジョッキをテーブルに置いた愛名ちゃんが、私の左側を睨みつけている。もちろんそこに誰かがいるわけではないけれど、きっと彼女は山下さんを思い浮かべているのだろう。
「最低。SNSで言いふらしてやろうかな」
「それだけは勘弁して」
「わかってます。そんなことしたら、先輩の失恋を世に広めるだけですからね。でもこのまま引き下がるなんて嫌です」
「うん……」
確かに、彼のしたことは許せない。人として最低だろう。
だけど好きになってしまった弱みがこんな時まで付き纏うものなのか、怒りよりも悲しみと情けなさが先行して私を覆い尽くしている。
「今日はとことんつき合います!金曜だし、先輩が酔い潰れてもマンションまで送っていけるので、ガンガン飲んでください」
飲んで忘れることができるだろうか。酔って解決するのだろうか。
明日になったら、純弥さんへの気持ちは跡形もなく消えてくれるのだろうか。
それができたら、大人はきっと幸せだ。
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