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高丘さんとは色々あったけど、きっと彼の中では過去になっているのだろう。
狙っていると言ってきたり、キスをしてきたり、ただの隣人ではなくなってしまったけれど、本気で恋をすると言うのならそれが1番だ。
春に愚痴を聞いてあげた夜以来、彼はベランダの仕切りを越えてこなくなった。勝手に部屋に上がり込んでくることも、一方的な約束をして連れ出そうとすることも、いつの間にかなくなった。
仲のいい隣人という関係が築けるのなら、彼にとってその方がいい。ただ1つ心残りなのは、記憶にこびりついてしまった高丘さんの色々な表情の忘れ方が分からないことだ。
失恋して酔って帰宅した日、ちゃんとこの部屋に帰ったらよかった。
心が弱っている時にあんな風に優しくされたら、曖昧で特殊な関係が欲しくなる。
純弥さんとつき合い始めてから、なんとなく感じていた高丘さんとの距離は、気のせいなんかじゃなかったと今になって気付いた。
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