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◇◇◇
帰宅して直行するのは、決まってベランダだ。高丘さんがいたらどうしようと思っていた去年の夏が懐かしく思える。1年なんてあっという間だ。
「お先してます」
「ただいま」
今日は帰宅が早かったのか、高丘さんが先に煙草を吸っていた。
「ねぇ、凛子さんの会社も忙しい時期でしょ?」
「そうね、夏直前は特に」
「俺も首が回らないっていう状況を久々に味わったよ。でも立ち向かうしかないんだけどね」
「楽しそうで何よりよ」
「忙しくて投げ出したい時もあるけど楽しいよ。仕事が趣味になりそう」
「デキる男みたいなこと、自分で言わないの」
「そうやって年下扱いするのやめてよね」
「はいはい」
1年前と大きく変わらなくてもいいものだってある。高丘さんとの関係は、これくらいの距離がいい。
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