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さほど混んでいない観覧車は、何組かを待ってすぐに乗ることができた。
「久しぶりに乗るなぁ、こういうの」
「山下さんとデートで行ったりしなかったの?」
「……基本、私の部屋にいる時間が長かったから」
「ふぅーん、そうだったんだ」
場所を問わず、彼は私のプライベートに土足で入ってくる。でも、1年前と変わらないその態度が、純弥さんと知り合う前に戻ったような感覚を呼び起こした。
「夜だったら、もっとロマンチックなんだと思うけどね」
「明るい時間だって、海が綺麗だよ」
高丘さんとロマンチックな雰囲気になるのは避けたい。言い寄られたとしても、真に受けたら傷付くと分かっている。
ぐんぐん高度を増すゴンドラは、時折海風に吹かれて揺れながら視界を広げていく。家からは見えないタワーや遠くに連なる山々が見え、圧倒的な壮大さに目が奪われた。
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