136人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょうど頂上に着いて、2分間だけゴンドラが止まった。景観を楽しませるための計らいだと聞いたことはあったけど、実際に体験すると感動的な時間が長くなって、夜景も見てみたくなってしまう。
「ねぇ、凛子さん」
不意に声を掛けられ、それまでお互い景色を堪能していた視線が数分ぶりに交わった。
「なぁに?」
「これ、良かったら受け取ってもらえないかなって思って」
彼が持ち込んでいた無地の紙袋から、見覚えのある袋が抜き出され、その中から1つの箱を手渡された。
「開けていいの?」
微笑みながら頷いた高丘さんも、私の手元に視線を移した。
「初めて凛子さんとデートした日から、渡せることを願ってたんだ」
そこには、私があの日欲しがっていたルブタンのローファーが並んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!