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「高丘さん」
「ん?」
「……うぅん、やっぱりあとでいい」
本当は聞こうと思った。
この前、女性を連れ込んでたこと。その上で私をデートに誘う意味は何なのか。
だけど、彼がプレゼントしてくれた時の表情が、こうして手を繋いで歩いてくれるこの時間が、あまりにも平穏で壊したくなくなってしまう。
首を上に向けないと見れなくなった彼の顔は、年下のはずなのに男らしくて、何でもない瞬間にドキドキさせられて、勢いが萎んでしまった。
「仕事の話なんだけど、父親と話して時々はサロンに出れるようになったんだ」
「そうなの?!良かったじゃない」
「いざそうなったら、やっぱり大変だって分かってきてるところ。なかなか予約に合わせて予定を組めなかったりしてさ。だったら、もうサロンには出ないって決めた方が潔かったんだろうなぁって。本当、俺が甘かったんだけどね」
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