rule 13

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 助手席の足元は、デートのはじまりと一変している。まるで彼の色に染められたような、そんな感覚がちょっと悔しいのに何だか嬉しくて、運転中の高丘さんをそっと盗み見た。  「ん?なに?」  「うぅん、なんでもない」  「……あまり見ないでくれる?運転に集中できなくなるから」    「あっ、そうだよね。ごめん」  見るなと言われたら仕方ない。携帯をバッグから出して、届いていたメールや不在着信を確認してから、車窓を流れゆくビルの明かりをぼんやりと見つめた。  「でも、ちょっとは構ってくれる?」  「もうどっちなのよ!」  「あはは、極端すぎるんだもん、凛子さん」  不意に伸ばされた手が、私の髪を撫でて戻っていった。  何なのよ、もう。  私の気持ちを奪ってばかりで、一向に彼の本心は見えないまま時間ばかりが過ぎていく。
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