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マンションの駐車場に彼が車を停めてくるまで、エントランスの中で待った。先に帰っても良かったのかもしれないけど、靴をプレゼントされた上に、食事までご馳走になったら、とてもそんな態度には出れなかった。
「いいなぁ、明日午前休なんだもんね」
「うん。夏休み前にある程度消化しないと、年末追いつかなくなりそうで」
10階に着いたエレベーターを降り、共用廊下を歩きながら、彼が持ってくれていたヒールをしまった紙袋を受け取った。
「今日は本当にありがとう。とっても楽しかった。それに素敵な靴も……大切に履きます」
「うん、俺も久々に楽しかった」
またベランダで会うかもしれないけれど、隔たりのない距離で話せるのはここまでだ。
もう少し一緒にいたい。でも、会えないわけじゃない。
近くて遠い、隣同士の距離がこんなにも切なく思う時が来るなんて、1年前は思っていなかったはずだ。
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