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「それじゃ、またね」
鍵を開けて、玄関のドアを引く。日中温められた室内は、あまり心地のいい空気ではない。
「……もう帰るの?」
「え、だって着いたし……」
離れたはずの手が再び繋がれ、彼に引き止められた。
「俺は、もっと一緒にいたい」
真っ直ぐに見下ろされると、自分の気持ちに素直になりたくなる。彼には色々聞きたいことがあるのに、それとは別問題だと言わんばかりに、気持ちが飛び出て走り出す。
「……ダメ?もうデートは終わり?」
甘えるような視線と困った表情で問いかけられて、一層心が揺らぐ。
「……寄っていく?私の部屋」
霧が晴れたように微笑んで、私に続いて入ってきた彼はずっと手を握って離してくれなかった。
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