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「ずっと悔しかったから、凛子さんを覚えてたのかもね。どう?少しは俺も大人になったでしょ?」
無邪気に微笑んで見つめてくる彼は、間違いなく年下の男だけれど、時々私を惑わせるには十分な色気を放つ。
「……まぁ、2年も経てば」
「俺のこと、これっぽっちも覚えてなかったくせによく言うよ」
「仕方ないでしょ?まさか、なんだから」
だけど、これ以上返す言葉はない。
脚を組んでソファーに大きくもたれる高丘さんが、缶ビール片手に私をまじまじと見つめてくる。
「高丘さん、本気で好きな人ができたんでしょ?ここにいていいの?」
「凛子さんが誘ってくれたのに?」
「今日はそうだけど……」
語尾がハッキリしないのは、彼の気持ちが分からないからだ。
他に好きな人がいるのに私とデートをしたその心模様が見えなくて、傷付かないようにしようとする自分が言い切ることを避けてしまう。
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