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自分の部屋だというのに居場所がない。このまま隣に座って話し続けられなくなって、何気なく立ち上がりベランダへと逃げた。
ここなら彼に背を向けることもできるし、夜空に視線をそらすこともごく自然だろう。
煙草に火を点けてゆっくりと吸い、もやもやとした気持ちと共に吐き出すと、なんとなく落ち着いてきた気がする。
高丘さんと話している分にはいいけれど、会話の合間に感じる雰囲気に独特の艶を感じてしまうのだ。
「凛子さん、変わってないね」
「……そう?」
不意に隣にやってきた彼に動揺しながらも、それを隠して適当な相槌を打つ。
「何をどうやっても、なかなか届かない高嶺の花って感じ」
「そんなことないでしょ」
「俺がそう思ってるんだから、それでいいの。凛子さんはもっと自分に自信を持ったらいいのに……」
黙っていたら愛想がないと言われるクールな顔立ちの私は、これくらいがちょうどいい。
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