rule 13

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 日付が変わる頃、彼はお酒が回ってきたのか眠たそうに欠伸をして、ソファーに寝転がりはじめた。  「そろそろ帰る?」  「ん、いや……」  ぼんやりとして天井を見ている彼は、返事まで眠たそうだ。ベランダであんなに情熱的なキスをしてきた人とは思えないような、とても穏やかなまどろみの中を漂っている。  「……凛子さん、もう寝る?」  隣に座る私は、彼を見下ろして首を横に振る。  「帰りたくないって言ったら、怒る?」  「女の子みたいなこと言うのね」  「ねぇ、凛子さん」  ちゃんと答えを言わない私を、彼は甘えた視線で見上げてくる。  「だって明日仕事でしょ?」  「朝には帰る」  「そういうことじゃなくて」  「一緒に寝ようよ」  「……」  余程難しい表情をしていたのか、高丘さんが微笑んで私の手を取り、甲にやんわりとくちづけた。
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