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だからといって、この気持ちが恋だと認められなくなった。
「高丘さん、私のこと好き?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「だって、好きじゃないのにこんなこと……」
「好きじゃなくたって、男はできるけどね」
「ひどーいっ」
「あははは、冗談だよ。俺がそんな男だと思うの?――」
開けられていたらしい窓から、見知らぬ女性との甘い会話が聞こえてきて、私は部屋に戻った。
適当な女性は連れ込まないと決めたくせにと、腹立たしくなる。彼は私とつき合っているわけでもないのに、まるで浮気をされたような感情は、妬いているからなのだと気付かされた。
この数日の昂った心は、気のせいだったのだ。
傷付いたところで優しくされて、彼がするりと隙間から入り込んできただけで、彼の気持ちは他の人に向いている。
私を諦めていないと言ったのも、彼にとっては同情だったのかもしれない。
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