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気のせいだと思いたいのに、妬いている気持ちは止まってくれない。壁1枚隔てた向こうで彼は誰かと身体を繋げているのに放っておけないのだ。
デートをしようと言ってきたのは、本当に約束を守るだけなのかもしれない。もちろん彼の気持ちだって、そこには欠片もなくて……。
――好きじゃなくたって、男はできる
聞いたばかりのその言葉が、まだ薄らと残る純弥さんとの恋を思い出させた。
彼は、私に1度も好きだと言わなかった。私が言ってばかりで彼がその2文字を口にすることはなかったのだ。
高丘さんもそうなのだろうか。
私が好きだと言っても、彼は曖昧にはぐらかして、身体だけの関係に持ち込もうとするのかもしれない。
「……やっぱり最低じゃない」
そう呟くものの、ソファーの上で彼の髪を撫でた時が思い出され、どうしても嫌いにはなれそうになかった。
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