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快晴の日曜は暑く、日差しが肌を焦がすように照らす。
「天気がいいから、海の方に行かない?それとも山間の方が涼しくていいかな」
約束した通り、高丘さんは私を愛車に乗せて高速を走っている。
「行き先決めずに走ってるの?」
「俺が行きたいのは海だけど、凛子さんはどうかなって思って」
聞くタイミングが遅い。すでに海方向へと向かっているルートなのに、今さら山がいいなんて言えるのは、彼と同レベルのマイペースな女だろう。
でも、今日はちょっと困らせてみようかといじわる心が働いた。いつも彼のいいなりになっているような気もするし、時々は私のわがままを聞いてくれるのか、反応を見ることだってできる。
「海も嫌いじゃないけど、私は山に行きたいな。美味しい空気を吸いたい」
「そっかー。じゃあ今度ね」
あっさり返された答えに、私は驚きを隠せなかった。あまりにも彼らしくて、いつも通りの彼でいてくれるなら、いっそこのままでもいいかと思えてしまうのだから、私もとことん弱い女だ。
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