rule 18

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 「傷ついて泣いてる時に、そばにいてあげることしかできなかった。ずっと奪いたいって思ってたのに……守りたかったのに何一つできなかった。結局、今は俺が悲しい思いをさせてるなんて、最低だよね」  冷めた笑みを浮かべながらコーヒーを飲む彼を見つめる。買収がなければ、彼のこんな悲しい表情を見なくて済んだのかもしれない。純弥さんを信じていると言いながら、せっかく得た幸せを手放す勇気がなくてしがみついていなければ、もっと早く彼と向き合えたかもしれない。  すべては過去の事。後悔したって変えることはできないのに……。  「私ね……高丘さんが雨の日に突然迎えに来てくれたのも、今日待っていてくれたのも、本当はすごく嬉しかったの。いつからかベランダで会えるのも毎日の楽しみになってた。失恋した時も高丘さんがいてくれてよかったって思って……気付いたら好きになってたの。だけど、純弥さんとの過去が高丘さんの仕事に支障が出るかもしれないって思ったら、気持ちを打ち明けない方がいいって思った時もあった」  「それでも、俺のプロポーズを待っててくれたんだよね?」  私は彼の問いかけに頷いて答えた。
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