rule A

4/18
前へ
/18ページ
次へ
 高丘さんに恋をして、私は変わった。  B型だから分かり合えない人だろうと思っていたのは、知りたいと思っていたから。  もっと知りたいと思った時にもどかしさを抱いたのは、彼を好きだったから。  いつか、彼の心が決まってしまう前のどこかで、素直に『そばにいて』と言えていたら、今も変わらずに恋を続けていただろう。  ベランダで他愛ない話をして、仕切りのある隣室の距離を楽しんだはずだ。  でも、上手くいっていたら変わらなかったこともある。  冷蔵庫のドアポケットに、真っ赤な恋の色をしたトマトジュースが常備されるようになった。開封されないままだった彼の忘れ物を、賞味期限が切れる前に口にしたら、とても美味しかったのだ。  先入観で恋を決めていた私の愚かさを、彼が気付かせてくれたのかもしれない。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加